人とどうぶつの人獣共通感染症のひとつである、「レプトスピラ」細菌感染があります。
かかってしまうと、致死率50%、あっという間になくなってしまう、おそろしい感染症です。無事に生き延びても、慢性腎障害になり、寿命をまっとうできなくなる可能性があります。
人獣共通感染症で、愛犬がこの病気にかかったら、保健所に届け出することが義務づけられている、届出伝染病に指定されています。
ただ、感染イヌから直接、人間にうつった例は報告されていないそうですが、、確定診断が難しいので、100%ないといいきれるかどうか、、って思いますが、
では、どんな病気でどこでうつるのか、
昔は九州・沖縄に多い、西の温暖な地域で多いから、関東は大丈夫というイメージがありましたが、
もう北海道でも発生して、もちろん、東京などの関東も発生しています。最近、逗子市と相模原で発生したので、緊急セミナーが開かれました。そこでの講演内容をご紹介します。
相模原って町田の隣ですから、他人ごとではありません、、、しかも、逗子市でレプトスピラにかかったわんちゃんは、2歳のトイプードルで近所しか散歩していなかったそうで、入院治療のかいもなく、6日で死亡したそうです。飼い主さんのショックと嘆きはいかばかりかと。(レプトスピラのワクチン未接種のわんちゃんだそうです)
Q1 どんな細菌ですか?
グラム陰性細菌(スピロヘータ目)
淡水や、湿った土壌で数か月生存します。
環境温度が15-36度で生存・増殖が促進されます。
つまり、春から初秋にかけての、ワクチン未接種のアウトドア活動のわんちゃんが、危険なのです。
アメリカでは、昔は狩猟大型犬に多かったのですが、ワクチンをうつようになって減ってきて、今は、ワクチンをうっていない小型室内犬ヨーキーに増えているそうです(アメリカでは、ヨーキーが人気だから)
Q2 ワクチンをうてば、大丈夫ですか?
レプトスピラは病原性14種、非病原性6種あり、犬には8-10種の血清型が病原性があるといわれています。そのうち、ワクチンで予防できるのは4種のみです。もちろん、コロナと一緒でブレイクスルー感染の可能性もありますが、症状は軽度になる可能性があります
ワクチンの抗体価は数か月でさがりますが、細胞性免疫もあるので、1年間、防御できるそうです(メーカー談)コロナと一緒で最初の年は2回うって、ブースター効果で抗体をあげて、翌年からは1年に1回でよいようです。
Q3 どんな症状がでますか?
食欲不振や元気がなくなります。血清型によって、パターンがありますが、
①急性腎不全になる 吐いてはいて、食欲廃絶、尿がでなくなっていく、、
②急性腎不全と肝臓障害、黄疸がでる
③肝臓障害、黄疸
④ブドウ膜炎
⑤肺出血症候群
⑥無症状(保菌者になります、、感染源になります)
Q4 潜伏期間は?
7日間です。
20年前ですが、西のほうに旅行に行った、若いわんちゃんが、具合がわるいといって来院して、(当時のわたしの勤務先でしたので)そして、急性腎不全になって、あっという間になくなったという事例をいまも、思い出します、、あまりにも早い、まるで、新型コロナにかかってあっという間になくなってしまったような、おそろしいことです。
Q5 確定診断は?
外注検査のみです
① PCR検査 でも、感度が悪いので、陰性でも否定できない、血清型の区別はつかない
② 抗体検査 血清型は3つしか調べられない
③ 菌分離 ほぼ無理です、、国立感染症研究所だけなので、、
ということで、レプトスピラの疑いでも、届け出するのですが、血清型まで調べるのが難しので、実際にどの血清型がはやっているのかが把握できないのです(ワクチンで予防できるのは4つのみ)
Q6 治療は
抗菌剤を2週間投与、腎障害には入院点滴、
血液透析が有効といわれていますが、全身麻酔が必要だし、設備のあるところが限られているので、現実的ではないのです、、
Q7 飼いイヌから、うつるのが心配ですが、、
急性発症し、治療をうけたイヌは保菌動物になりません、抗生物質開始後すぐに尿中から菌が検出でlきなくなる、
一般的な消毒剤で殺菌できるので、飼い犬から飼い主がうつったという報告はないらしいです。
Q8 なにから、うつるの?
これが、一番、肝心なところですよね。
レプトスピラで汚染された尿に直接、間接的に接触します。粘膜や、皮膚の傷から感染して血液中にはいります
( 経口・経皮感染です。新型コロナみたく、飛沫感染はしません)
つまり、
感染源は保菌動物の尿からです!!!
なんと、猫ちゃんはレプトスピラにかかっても腎障害にはならないのですが、保菌動物になっていることがあります
お外にいく飼い猫の3%で尿のレプトスピラが陽性、9%で抗体陽性といわれています。
Q9 どこでうつるの?
人のレプトスピラ症の国内発生は223(2003-2012)件で、沖縄が半数、その他は宮崎、東京です
東京?って思われると思いますが、東京ってドブネズミ多いですよね。六本木ヒルズで、ドブネズミが、おしゃれなレストランのテラス席を走っているのをみたことがあります。
① 河川、滝のレクリエーション
② 農作業
③ 店舗、家屋内のドブネズミ
東京23区内のドブネズミのレプトスピラ保有状況は
公園、歩道の植え込み、住宅の庭、家屋内、店舗内 で検出されています、、
都会だから、大丈夫ってことないのです。
あとは、保菌動物がいるかもしれない、ドックランですよね!!!
ちなみに淡水にいる菌ですので、川にはいますが、海にはいないとのことです、
でも、浜辺の海にそそぐ川は危ないですよね、、
洪水の後の川が危ないそうです。
海外で多いのはタイですが、フィリピンで台風、集中豪雨でマニラが冠水して89名がレプトスピラ感染症で死亡したそうです。
最近、温暖化と集中豪雨で水害が多発してますので、街中でも、危険が潜んでいるかもしれません。
④ 対策は
一生、家の中で自粛しているわけにはいかないので、
ワクチン接種をして、なるべく、川に入るようなレジャーを避けたほうがいいかもしれませんね。
たくさんの犬が集まるドックランやキャンプ場の土壌や、ゴミなどが、汚染されている可能性もありますので、ご注意ください。気温が高いと菌は数か月そこにいますので、、貸し切りドックランでも安心はできません、犬との接触ではなくって、土壌や水との接触ですから。
2年以上、レプトスピラのワクチンを打っていない場合は2回接種したほうがいいとのことです。
当院でもワクチン接種をしていますので、ご相談ください。
おすすめなのが、キャンプなど行くのでしたら、コアワクチン(ジステンバー、パルボ)とは別に、春先にレプトスピラ単独のワクチン接種をして、病気に備えておくのがよいかと思います。
うちの犬たちは、レプトスピラのワクチン接種をしていますが、ちょっと心配になっています。、潜伏期間7日間がすぎれば、安心ですが、、、