2,3歳の若いワンちゃんでもおきる、
朝起きた時、立てない
ワンとないて、急に痛がって立てない などなど
これって急性椎間板ヘルニアの可能性があります。
先日、急性椎間板ヘルニアの最新知見のセミナーに参加しました。
当院には、CT、MRI設備はありません、椎間板ヘルニアの手術をしていませんので、ご質問の電話などは
ご遠慮ください。あくまで、飼い主様として知っておくべき情報提供としてお考えください
1)椎間板ヘルニアになりやすい犬種
ミニチュアダックスフンドが他犬種の12倍なりやすいといわれています。遺伝的要素が大きいです
2)椎間板ヘルニアになりやすい体型
胴長短足かと思いきや、それだけでなく、
胴が短く足が短い、体重の多いわんちゃん(身につまされますが、、、)
ある程度、日ごろから運動しているほうが、ヘルニアになりにくいそうです、、
3)確定診断は
高磁場のMRIが推奨されています(1.5とか3テスラ)
でも、高磁場MRIはめちゃくちゃ高いので、一般的な病院では低磁場が多いそうです。
低磁場MRIだとチワワなどの小さな犬種は、診断が難しいとのことです。特に、高齢のダックスフンドはCTや低磁場MRIでは描出困難で診断が難しいそうです(せっかく、全身麻酔かけても、、悲しい、)
①MRI 診断感受性 98.5%以上 予後因子や他の疾患(髄膜脊髄炎など)も判別できる
②単純CT 石灰化した病変のみ 感受性81-100% 予後因子の情報が得られない
③CT脊髄造影 53-97% ただし、造影剤吸収、けいれん、造影剤アレルギーのリスクあり
④脊髄造影 53-97% 脊髄圧迫病変が右と左どちらかを特定するのがエラー多い
といっても急性の椎間板ヘルニアだから、とりあえず、見てくれる病院に駆け込むことになるので、
診断装置などを選んでから行くのは、難しいですよね、、、
4)椎間板ヘルニアのグレードとは
グレード1 痛みのみ 麻痺や排尿障害、排便障害なし
グレード2 歩行可能な不全マヒ(完全にマヒしているわけではない)
足の位置がわからない
グレード3 歩行不可能な対麻痺(両前肢後肢ともに)足を前後に動かせない。痛みはある
グレード4 表面の痛みはわからないけれど、深部痛覚はある
歩行できない、両前肢後肢の麻痺
膀胱麻痺(排尿障害)排便できない
グレード5 深部痛覚まで失われた対麻痺 、かなり、危ない、最も重症度が高い
自力排尿も排便もできない
手術しても回復するかどうか(10-38%)、、、
脊髄軟化症の可能性がある(14.5%)進行性の脊髄軟化症の場合は、呼吸不全で1週間で死亡
5)治療は
内科療法後の再発率は15-66%
グレード1,2 内科療法回復率 80% 外科回復率98.5%
グレード3 81% 93%
グレード4 60% 93%
グレード5 21% 61%
なんでもそうですが、手術するのなら、早い時期が回復率も高く、予後がよいとのことです。
とくに重症度の高い場合は、24時間以内の手術がベターだそうですが、、(現実は、そううまく、スピーデイーに手術につながるか、、)、グレード4の深部痛覚のある対麻痺は、24時間たってしまうと、12%の確率で深部痛覚が消失してグレード5に進行してしまう可能性がある、エマージェンシーです。
椎間板ヘルニアのすべてが手術適用ではなく、なかには、手術しても回復の見込みのないケースもあります。
その判断はMRIでないと、、、
6)後遺症は
手術して歩けるようになっても、、、残念ながら、排尿障害や排便障害が残ることがあります
グレード1-2 後遺症発生度 5.6%(排尿障害)3.3%(排便障害)
グレード3 後遺症発生度 5.3%(排尿障害)2.9%(排便障害)
グレード4 後遺症発生度 16.4%(排尿障害)17.7%(排便障害)
グレード5 後遺症発生度 38.2%(排尿障害)18.2%(排便障害)
7)4-6週間安静にしないといけない理由
内科療法にしろ、外科手術にしろ、安静が必要です。理由は、脊髄を圧迫している椎間板物質を囲っていた
繊維輪をいう壁がこわれて、椎間板ヘルニアがおこるので、その壁が修復されるまでに4-6週間かかるからです。
手術で圧迫物質を除去して減圧しても、この壁の繊維輪は再生されるまで待たないといけないからです、
8)進行性出血性脊髄軟化症の発生リスク
椎間板ヘルニアのこわいところは、歩けなくなるだけでなく、1週間で呼吸不全になって死亡する脊髄軟化症のなってしまうこともあるからです。
グレード3以上からその発生リスクがあります。
グレード1-2 0%
グレード3 0.6%
グレード4 2.7%
グレード5 14.5%
9)グレード5になったら、手術しても無駄?
グレード5の深部痛覚まで失われた麻痺のわんちゃんでも、
10-38%が歩行機能が回復するそうです。術後6-9か月で回復しはじめますが、後遺症が残ることもあります